第19回谷崎潤一郎研究会のお知らせ

第19回谷崎潤一郎研究会を以下の内容で開催します。

[日 時]2015年4月4日(土) 14:00〜17:40(開場13:30)

[会 場]県立神奈川近代文学館 2階ホール
   〒231-0862 横浜市中区山手町110(港の見える丘公園内)
   http://www.kanabun.or.jp

[プログラム]
□研究発表 
 
*司会:明里千章
 グレゴリー・ケズナジャット「「メルティング・ポット」のあり方─谷崎潤一郎「魔術師」論─」
 山口政幸「谷崎潤一郎と中国体験」


□特別インタビュー
 「森田チヱコ氏に聞く」
  
*聞き手:千葉俊二
 (※発表要旨・内容は次ページに掲載)

[発表要旨・内容]
□研究発表
◆グレゴリー・ケズナジャット「「メルティング・ポット」のあり方─谷崎潤一郎「魔術師」論─」
異なる言語と文化の接触に対する意識は谷崎潤一郎の大正期作品に通底するものである。「人魚の嘆き」や「ハッサン・カンの妖術」など、不思議な異国を舞台とする物語のほか、「独探」や「魔術師」のような東京という身近な設定で同じ問題を取り上げる作品も発表される。これらの作品においては、文化や言語が交錯し、溶解する過程を描く空間として、浅草、殊に浅草公園六区が現れる。谷崎に「メルティング・ポット」と呼ばれたこの特殊な場所はまさに文化交流の実験台として機能する。
「六区よりも更に一層六区式な」場所を舞台とする小説「魔術師」では、人種、階級、性別、あらゆる差異を融合させる魔術師という形で作者の「メルティング・ポット」像が極端に描出される。しかし「メルティング・ポット」を単なる「坩堝」と解釈しては捉え切れない要素も作中に残る。
本発表は「メルティング・ポット」という表現の同時代的意味を再現することによって、この作品の新たな解釈を導く試みである。具体的には、十八、九世紀のアメリカ合衆国で形成し、二十世紀初頭にイズレイル・ザングウィルの戯曲「るつぼ」の影響で急激に普及した「メルティング・ポット」言説に注目する。その上で「魔術師」で繰り返し言及されるエドガー・アラン・ポーの作品における「メルティング・ポット」の概念を検討し、その概念が谷崎の大正期作品における言語と文化交流にどのように反映されたかを考察する。
(同志社大学大学院文学研究科 博士後期課程)

◆山口政幸「谷崎潤一郎と中国体験」
谷崎が第一回目の中国旅行をおこなったのは、大正七年(1918年)のことで、中華民国という近代の中国国家が現れてから、六年しかたっていない時期であった。谷崎のツーリスト的な文学的関心は、連綿とうち続く中国古典文学の理解と受容に傾いて行き、そこから生じる、いわゆる「支那趣味」を自認するようになったのは周知のごとくである。
それに比べ、第二回目の中国旅行が、上海という限られた地域に限定され、日本の近代文学の洗礼を受けて、自国の文学を新しく作り変えようとしていた現地中国の青年文学者ら文化人との交流をはたした結果、従来の気儘な自身の「支那趣味」観に変容をきたした。これが、西原大輔の『谷崎潤一郎とオリエンタリズム』(2003年)以降、谷崎の中国体験を定式化した見方のあらましであろう。中国ものの先鞭をつけた宮内淳子の「西湖の月」論や細江光の「天鵞絨の夢」論に、中国人留学生によって新たな研究成果が徐々に付け加えられていきつつある現在ではあるが、同じく中国体験を経過した芥川を論じたものに比して、トータルな把握を含めて、その数はまだ多いものとはけっして言えない。千葉俊二が言うように、芥川や佐藤春夫とは異なり、谷崎は自らの旅行体験を一書にまとめることはしなかったが、彼にとっての「中国」への意識は戦時中も、戦後も変わらず継続していたのである。
谷崎にとっての中国体験とははたして何だったのか、何をもたらしたのかを探っていきたい。(専修大学教授)

□ 特別インタビュー
◆「森田チヱコ氏に聞く」*聞き手:千葉俊二(早稲田大学教授)
昭和九年三月に打出下宮塚で松子とはじめて同棲生活をはじめた時に「水野寓」という表札を掲げたことはよく知られておりますが、森田チヱコさんはその折に谷崎に名義を貸した水野鋭三郎という人物の孫です。
水野鋭三郎については、今日までどのような谷崎の伝記にも詳しく紹介されたことはありませんが、松子の実家の森田家とも縁戚関係にあり、松子と根津清太郎との離婚問題を実質的に処理した人物でもありです。
またチヱコさんの父は、昭和八、九年ころの谷崎書簡に時々名前の出てくる森田勝一という方です。一時期、勝一さんは谷崎の家に住み込んで書生として、「文章読本」の口述筆記をおこなったりしました。
そんなことで森田チヱコさんのところには、これまで知られていない谷崎関係の資料もありますし、谷崎と深く関わったチヱコさんの御祖父、御尊父についてのお話をお伺いしたいと思っております。
【参考文献】
千葉俊二解題 新資料「谷崎潤一郎・松子、水野悦三郎宛ほか書簡六通――森田チヱコさんに聞く」(『KAWADE夢ムック 文藝別冊 谷崎潤一郎』河出書房新社、2015.2.28)



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