高峰秀子出演「細雪」上映会

「細雪」上映会「細雪」1950年 新東宝 白黒 141分
監督 阿部豊 
出演 花井蘭子 轟夕起子 山根寿子 高峰秀子 伊志井寛 田中春夫 田崎潤 藤田進 香川京子ほか

日時:5月4日(金・祝)(1) 10:30 (2)14:00
会場:芦屋ルナホール(兵庫県芦屋市業平町8−24)
参加料:500円

谷崎潤一郎の「細雪」はこれまでに3回映画になりました。今回、上映するのは初め て映画化された1950年の作品です。小説の完成からまだ2年しかたっていない時期で、原作の息吹を伝えています。【谷崎記念館・永井敦子】

*チケット(500円)を谷崎記念館で販売しています。お買い求めの方には、会場中央エリアのお席を確保します。
 



『猫と庄造と二人のをんな』について〜マゾヒズム、その可能性と不可能性

発表では、まず、この物語が縦軸をなす(おりん−庄造−リリー)の線分と横軸をなす(品子−庄造−福子)の線分が庄造を中心に6つの三角関係を形成し、これが物語を動かすエンジンとなっていることを確認した。また物語の類型としては『遠野物語』や『今昔物語』にあるような人間と動物の恋愛に関する物語という意味では、日本文学の伝統を継承しつつ、伝記であるかのような『春琴抄』や紀行文的な『吉野葛』などとともに、谷崎文学の豊かなバリエーションの一角を形成しており、また神との比較において人間を考える『神と人間の間』に対して、猫との係りにおいて人間を考える「猫と人間の間」でもある。しかし漱石の『猫』の名無しのオス猫が、明治の知識人達を皮肉り、文明批評までしてしまう知的で人間化された存在であるのに対して、谷崎の猫はあくまで情動的で美的な存在である。
リリーに関しては、谷崎文学における代表的なヒロインのイメージである「若く、美しく、高貴で、理想的な西洋人女性像」のパロディーと位置づけ、さらに谷崎の作品や人生とのレファランスからは、「略奪婚」といった観点から『少将滋幹の母』や松子夫人との結婚を挙げ、猫≒妻譲渡事件に関しては、(1)佐藤春夫との間での千代夫人の譲渡。(2)松子夫人との結婚に際し、妻の吉川丁子の新夫を自ら選定。(3)また妻譲渡をテーマとした『蓼喰ふ虫』などとのレファランスの中にある作品ということができる。最終的な読みとしては、庄造と品子という離婚した夫婦がともにリリーと等しく親密な関係を築いたが故に、リリーを介して再びやり直す可能性が開かれたところで物語が閉じられている、と考えた。その意味では、『卍』をコミカルに乗り越えた作品と言えるだろう。
また語りについては、「言」は関西弁、「文」は標準語という言文不一致体。語り手がある「言」を読者に示した後で、あたかも読者にその意味を説明するかのように反復しながら、自らの内に取り込むことで、「言」と「文」の乖離とそれによる物語の破綻を回避しようと試みている点についても若干触れたが、この点については今後の研究課題としたい。同様に、質問のあった源氏物語現代語訳との関係や「宇治十帖」の物語内容との関連などについても、考えてみたいと思う。【生江和哉】



「「近代」の鬩ぎ合い――谷崎潤一郎『痴人の愛』試論」〜 研究発表を終えて

今回の発表では、谷崎潤一郎の小説『痴人の愛』において「近代」がいかに現れるかを考察した。発表を終えて、まだ谷崎の「近代」という大きな森の一つの入り口に佇んでいるといった感じがあり、反省も残る。しかし一方で、発表者の余白を埋めるかのように会場よりさまざまな角度から「近代」を問い返すような指摘を頂き、問いそのものの有効性を再確認することができた。多くのご助言を頂いたことに感謝を申し上げると同時に、今回の発表を出発点として今後さらに追求していきたい論点を整理し、これからの課題をこの場を借りて報告したい。

発表はまず第一に、「近代」が示す意味内容を具体的に作品に即して明らかにし、その上で第二に、「近代」を構成するさまざまな価値に依拠しながら登場人物たちが鬩ぎ合う「近代」の力学を浮かび上がらせようとした。そのための出発点として、同時代言説を参照し、「近代」あるいは「モダン」が多様な位相をもつこと、なかには互いに矛盾する価値が「近代」として並んで語られていることを確認した。この「近代」の多義性や両義性を踏まえて、谷崎の「近代」だが、まず言葉の使用の面で、モダン語辞典類の用例に映したとき、一つの疑問が浮上した。『痴人の愛』の作品中には「近代」「ハイカラ」「西洋」といった言葉が頻出するが、『痴人の愛』の執筆当時「モダン」という言葉が既に流通していたにも関わらず、敢えて「ハイカラ」や「近代」という言葉を用いた理由とは何か。一つにはこの作品が回想の形式に拠ることが考えられるが、単純に時代的な理由以上の意味がありそうであるし、読者が読む際の効果も異なってくるだろう。一方、後者の論点と関連しては、会場の皆さんから非常に多くの教示を頂いた。谷崎における「近代」は、西洋風俗の摂取が論じられることが多いが、科学や技術、電気、西洋における「近代」との差異など、『痴人の愛』の「近代」を読む際に考慮すべきキーワードは多くある。谷崎潤一郎という作家やその作品が体現している「近代」の多彩な側面を、その文脈により密着して照らし出していくことは私の課題である。

研究会を通して、励ましに満ちたご助言ご指摘を頂けたことが幸運であることはもちろんであるが、ふだん戦後を専門としている私にとって、谷崎に携わっている皆さんとの交流の機会に恵まれたことは、もう一つの大きな喜びであった。今回の研究会でうまれた刺激も交流も大事にあたためていきたい。【金志映】 



特別展「文豪・谷崎潤一郎の先覚〜「源氏」「細雪」「鍵」…名作にみる出版戦略〜」

芦屋市谷崎潤一郎記念館で、以下の展覧会が開催されます。

2012年春の特別展2012年度春の特別展
「文豪・谷崎潤一郎の先覚 〜「源氏」「細雪」「鍵」…名作にみる出版戦略〜」

期間:2012年4月1日(土)〜6月24日(日)
開館時間:10:00〜17:00(入館16:30まで)
※月曜休館(ただし祝日は開館し、翌日休館)
料金:一般300円 大・高生200円(団体割引有)中・小生無料。

半世紀にわたって「売れる」名作を送り出し続けた谷崎は、本の装丁や宣伝などにも アイデアを出し、天性の自己プロデュース能力を発揮しました。中央公論新社の秘蔵 コレクションをはじめとする品々には、文豪の類まれなセンスが光ります。
<主な展示品>「潤一郎訳源氏物語」黒漆箱入り愛蔵本、伊東深水、鏑木清方らのポ スター原画、棟方志功装丁の書籍など。【谷崎記念館・永井敦子】


問い合わせは芦屋市谷崎潤一郎記念館まで。
http://www.tanizakikan.com/




"COGITO" Vol.IV, No.1

・Yoshiki Hidaka「MODERNITY AND TANIZAKI JUNICHIRO'S STYLE REFORM: THE THOUGHT PROCESS LEADING TO "THE TASTE FOR CLASSICAL JAPANESE HISTORY OR LITERATURE" 」

"DIMITRIE CANTEMIR" CHRISTIAN UNIVERSITY(ルーマニア)の国際ジャーナル誌"COGITO"のVol.IV, No.1に、昨年8月にブカレストで開催された日本学の学会での基調講演の内容を論文化して発表しました(英訳:Irina Holca)。
日本語のタイトルは、
「近代性と谷崎潤一郎の文体変革―〈国史趣味乃至和文趣味〉への通路―」
というわけで、「盲目物語」を取り上げながら、昭和初年代の谷崎が取り組んだ文体変革と歴史への意識の問題を〈翻訳〉を切り口に検討しました。掲載誌の目次と論文本文へのアクセスはこちらです。【日高佳紀】



第16回 谷崎潤一郎研究会のご案内

 第16回谷崎潤一郎研究会を開催します。

日時:2012年3月24日(土) 13:00から
会場:神戸女子大学教育センター・特別講義室
http://www.yg.kobe-wu.ac.jp/wu/access/index.html#sannomiya
〒650-0004 神戸市中央区中山手通2-23-1
(JR三ノ宮駅より徒歩20分。NHK神戸のそば)
[発 表]
金志映「鬩ぎ合う「近代」―谷崎潤一郎「痴人の愛」試論―」
生江和哉「『猫と庄造と二人のをんな』について
〜マゾヒズム、その可能性と不可能性〜」
野澤和男「阪神大水害史からみた「細雪」山津波の件の一考察」
(※発表要旨は次ページに掲載)
[問い合わせ]info(a)tanizakij.net ※(a)を@に換えてください。

◎研究会終了後に懇親会を行います。ぜひご参加ください。



『近代文学 研究と資料』第2次第6集

・秋山桂「おかしい生活─雑誌『女性』と『痴人の愛』論─」

・田寧「辜鴻銘と谷崎潤一郎─「饒舌録」を中心に─」 



『成城国文学』第28号

・〈講演記録〉井上健「大正作家の翻訳しようとしたものは何か―谷崎潤一郎、佐藤春夫を中心に―」

・横田彩花「谷崎潤一郎「孝」の考えをめぐって―「不孝な母の話」考―」
 



『大妻国文』第43号

・五味渕典嗣「漸近と交錯―「春琴抄後語」をめぐる言説配置―」

[要旨]『春琴抄』の同時代評を改めて検討し、「春琴抄後語」が、同時代の文学言説において語られていた問題構成を強く意識した谷崎なりの応答であったことについて論じました。【五味渕典嗣】



『性が語る―二〇世紀日本文学の性と身体』

『性が語る』性と身体をめぐる問題を扱って近代文学研究をリードしてきた著者による大著が刊行されました。
谷崎関連では「第IV部 性的身体としての語り―谷崎潤一郎」で、『金色の死』『痴人の愛』『少将滋幹の母』『鍵』『夢の浮橋』などの諸作品が取り上げられ、性を語る男性主体の問題を批判的に捉え「語る声と行為がどのように女性主体に対する抑圧のもとに成立しているか」(序章)が論じられています。(坪井秀人著、名古屋大学出版会、6,000円+税)
***
ラフカディオ・ハーンから伊藤比呂美まで ――性の政治性を問題化することをフェミニズム批評と共有しながらも、思想の道具化を排し、20世紀日本文学がとらえる性のすがたを、語る主体に焦点を当てることで、個々のテクストに即して描き出す。語り書く男性そして女性の、愉悦と葛藤を内包した声や身体を 〈私〉 へと奪還する試み。 【出版社の紹介文】



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までお願いします。
※谷崎潤一郎に関するご著書・ご論文等を刊行・発表された方は、研究会会員内外を問わず、情報をお寄せください。ご論文については150-300字程度の[要旨]をお送りいただけるとありがたく存じます。

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