谷崎潤一郎研究会閉会に伴う本サイトの措置について

2017年3月26日に愛知淑徳大学で開催されました第21回谷崎潤一郎研究会の総会におきまして、22年間つづいてきました谷崎潤一郎研究会の閉会が決まりました。

これに伴い、谷崎潤一郎研究会公式ホームページも閉じるべきところではありますが、総会の場での多数のご意見・ご希望に応えるかたちで、向こう1年間、2018年4月1日まで本サイトを存続することにしました。但し、2017年3月31日をもちまして、更新は終了いたします。

2010年3月の本サイト開設以来のご支援・ご協力に感謝申し上げるとともに、このたびの研究会閉会に伴う措置につきまして、ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

 

谷崎潤一郎研究会web管理者

 




「「卍」―女学生言葉の使用と人物像の変遷について」を終えて

「卍」はよく知られている通り、初出と初刊の間に大きな異同がある。最初は標準語の形で発表がされたが、次第に会話文の中に「関西弁風」の言葉が混じるようになる。最後には会話文も、柿内園子による「語り」の部分も「関西弁風」の言葉で統一されるようになる。そして初刊『卍』では、当初標準語で書かれた部分も全て「関西弁風」の言葉に書き直されて出版されることになる。
今回の発表では初出の「卍」を取り上げ、標準語で書かれた部分について使用されている「女学生言葉」というものについて確認し、初出「卍」の会話文に「関西弁風」の言葉が使用された途端、柿内園子の「語り」から、「女学生 言葉」が一気に排除されたという現象に対して、提示と考察を行った。
「〜のよ」、「〜のね」といった表現が多用される「女学生言葉」は、「痴人の愛」でもナオミによって使用されており、ここでは河合譲治による「語り」の中に、ナオミの言葉が浮き上がる形になっている。
しかし「卍」では、柿内園子の「女学生言葉」による「語り」の中に、徳光光子の「女学生言葉」による会話文が埋没する形になってしまっている。この不具合に谷崎が気づいた時に、「卍」は、標準語による「語り」の中に、「関西弁風」の言葉による「語り」が混在するという形態に変化したのではないかという可能性について述べさせていただいた。
会場では多くの方にご意見と示唆をいただいた。特に、「関西弁 風」の言葉に変化した後の初出「卍」にも、標準語ではない、「関西弁」の「女学生言葉」が使用されているのではないかというご指摘には多くを教えられた。
その後、初出「卍」の、おそらく「関西弁」による「女学生言葉」とおぼしき部分について、初刊「卍」と比較をしてみたが、ここでは、関西弁風の言葉について、数多くの異同が存在していることが確認できた。
今後の大きな課題として、「関西弁」による「女学生言葉」についての資料を確認し、初出「卍」が「関西弁風」の言葉に変化した後も「女学生言葉」そのものが、継続して
使われたかどうかということを検証して、更に論を深化させていかねばならないと考えた。
大学を離れ、研究という分野とは違う職種についていると、 どうしてもこういった、研究発表をするという機会からは縁遠くなってしまう。今回、拙いながららもこうした機会をいただいたのはたいへんありがたく、谷崎潤一郎研究会にはいくら感謝してもし足りないというのが現在の気持ちである。
このご恩に報いるために、今回の発表をさらに突き詰め、いつかは論文という形にまとめられるように今後も努力していきたい。様々にご意見くださった皆様、そして激励くださった方々、本当にありがとうございました。【福田博則】




『文学・語学』第218号(全国大学国語国文学会創立60周年記念号)

〈特集〉グローバル化の中の日本語・日本文学─その方法と交流の可能性─

・河添房江「『源氏物語』の翻訳と現代語訳の異文化交流」

・生方智子「上演される〈西洋〉とリアリティの更新─第二次「新思潮」における青年文化の展開─」

 

 

 




『翻訳の文化/文化の翻訳』第12号

・中村ともえ「谷崎潤一郎と翻訳─『潤一郎訳源氏物語』まで─」

 




「谷崎潤一郎『細雪』論―鶴子を視座として―」の発表を終えて

発表では、蒔岡四姉妹の長女でありながら、作中での影が薄い鶴子に焦点を当て、本作における鶴子の役割を幸子、雪子、妙子の描かれ方と比較し考察した。本作の作中時間(1936年〜1941年)において、健康的な子どもを生み育てるためには「若さ」や「健康さ」を備えた女性が理想的であると考えられていた。鶴子は実年齢よりも「若く」見え、六人の子どもを生み育てながらも衰えることのない「健康」的な肉体を所有している。三人の妹たちは「若さ」という美点を有しながらも、「健康さ」からはほど遠い人物として描かれている。そして、物語の進行とともに三人の妹たちはそれぞれの幸福を手にしていくが、理想的な女性として描かれた鶴子の生活は衰退の一途をたどることとなる。その原因として、時代の要請、周囲の環境に影響され自らの生き方を変化させていく鶴子の弱さを指摘した。幸子、雪子、妙子の振る舞いは時に時代にそぐわず、他人や家族の迷惑を省みないものである。しかし、その強さがあったからこそ彼女たちは鶴子のような境涯に陥ることはないのだと結論付けた。

質疑応答や懇親会では、「若さは、谷崎作品において女性の美しさを形容するものとして繰り返し登場するため特別視することはできないのではないか」、「四姉妹が持って生まれた素質としての若さの意味に注目すべきではないか」、「鶴子と三人の妹を対比させるのではなく、母親似である鶴子、雪子と父親似である幸子、妙子とを対比させてみてはどうか」、「作中人物同士のやりとり(お互いの生き方に対しどのような考えを抱いているか)に注目してみてはどうか」、「本当に鶴子の未来は暗いのか」など数多くのご指摘をいただきました。本作の作品分析を始めた時は、鶴子を評価したい(肯定的に解釈したい)と考えていましたが上手くまとめることができず、今回のような結論に至りました。今回いただいたご意見、ご指摘をもとにもう一度鶴子について考察していきたいと思います。

最後になりますが、今回はじめて本研究会に参加させていただきとても楽しく有意義な時間を会員の皆様と過ごせたことを心より感謝いたします。本研究会は今回が最後となりますが、また新たな機会、場所で谷崎作品についてお話できることと信じております。本当にありがとうございました。【小林珠子】




新資料から見る谷崎潤一郎―創作ノート、日記を中心にして

日本近代文学館において、決定版全集刊行を記念した展覧会が開催されます。

 

◎新資料から見る谷崎潤一郎—創作ノート、日記を中心にして

会期:2017年4月1日(土)〜6月10日(土)

会場:日本近代文学館 館内展示ホール

特別協力:中央公論新社

編集委員:紅野謙介、千葉俊二

 

初公開資料:創作ノート「松の木陰」印画紙、晩年の日記(1958年7月〜1963年2月)

 

展示概要

第1部 生涯と作家的出発まで

第2部 単行本でたどる谷崎文学

第3部 晩年の日記から

第4部 創作ノートの小宇宙

第5部 「細雪」と松子夫人

第6部 書簡にみる谷崎潤一郎

 

記念対談:「谷崎潤一郎 デンジャラスな作家」

桐野夏生×千葉俊二

日時:2017年5月3日14:00から

会場:日本近代文学館講堂

定員:80名

入場料:2000円(展示観覧料を含む)

※申し込みは、日本近代文学館まで。

 

>>詳細はこちら

 




第21回谷崎潤一郎研究会のお知らせ

第21回谷崎潤一郎研究会を以下の内容で開催します。
[日 時]2017年3月26日(日) 13:00〜17:30(開場12:30)
[会 場]愛知淑徳大学 星ヶ丘キャンパス  1号館2階 12A教室
〒464-8671 名古屋市千種区桜が丘23
〈アクセス〉市営地下鉄東山線「星ヶ丘」下車 3番出口から徒歩3分
http://www.aasa.ac.jp/guidance/campus_guide/map.html

 

[プログラム]
□研究発表(13:00〜17:00)
*司会:佐藤淳一
小林珠子「谷崎潤一郎『細雪』論―鶴子を視座として―」
平田桂子「『春琴抄』のカラクリ2―解釈を促す装置としてのテクスト」
市川元昭「谷崎文学出発期の文体論」
福田博則「「卍」―女学生言葉の使用と人物像の変遷について」

 

□総会(17:00〜17:30)

(※発表要旨・内容は次ページに掲載)




『短歌研究』2017年4月号

・千葉俊二「谷崎潤一郎と短歌 ─「ありのすさひ」について─」

 




『谷崎潤一郎全集』第23巻

決定版『谷崎潤一郎全集』第23巻(第23回配本)

 

『三つの場合』
三つの場合
吉井勇翁枕花
若き日の和辻哲郎
古川緑波の夢
伊豆山放談
幼少時代の食べ物の思ひ出
日本料理の出し方について
おふくろ、お関、春の雪
親父の話
或る日の問答
千萬子抄
『当世鹿もどき』
はしがき〔『当世鹿もどき』〕
当世鹿もどき
【単行本未収作品】
老後の春
残虐記
【雑纂】
明治回顧
序(『谷崎潤一郎全集』)
阿呆伝序
審査員の言葉
私と国歌大観
あの頃のこと
ふるさと
序〔武林無想庵『むさうあん物語7』〕
「法成寺物語」回顧
秦豊吉君のこと
「少将滋幹の母」再演について
祝辞(紫式部歌碑除幕式によせて)
無題〔「残虐記」中断のおわび〕
気になること
序にかへて〔『潤一郎訳源氏物語』〕
「貴多川」開店祝
京舞礼讃
新版幼少時代序
あの頃のこと(山田孝雄追悼)
手紙〔水野多津子宛書簡〕
無題〔『少将滋幹の母』断書〕
銀婚式披露挨拶
敏介とピン助
無題〔「週刊新潮掲示板」昭和三十五年十一月七日号〕
「細雪」を書いたころ
幼き日の六代目
潤一郎訳源氏物語愛蔵版序
和辻君について
武林君を悼む
無想庵君のために
舌代(喜寿挨拶)

 

解題(明里千章・佐藤未央子)

 

附録●月報23

谷崎潤一郎と和辻哲郎 苅部直
谷崎潤一郎はよく読んだ方 森博嗣

 

(編集委員/千葉俊二・明里千章・細江光、中央公論新社、6,800円+税)




『kotoba:多様性を考える言論誌』2017年春号

・千葉俊二「死に向き合う谷崎潤一郎 : 阿部徳蔵宛書簡をめぐって 」

 




| 1/39PAGES | >>

about

研究会に関するご連絡は
までお願いします。
※谷崎潤一郎に関するご著書・ご論文等を刊行・発表された方は、研究会会員内外を問わず、情報をお寄せください。ご論文については150-300字程度の[要旨]をお送りいただけるとありがたく存じます。
《終了しました》

recent entries

archives